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尿療法の歴史

   人類の歴史を振り返るとき、尿療法の歴史は極めて古く、極限状態におかれた人は、他の野生動物と同じく自分の尿を飲んで生き延びてきましたから、尿療法の歴史的起源は文字の発明以前にあり、最初は口伝で伝えられたものと思われます。歴史的な文献の中では、紀元前3000年ほど前のインドの文献やヴェーダ経典にこの治療法が述べられている事も良く知られています。インドの文献によれば、「飲尿により疾患と老化が予防され、1ヶ月で身体内部が浄化され、3ヶ月で軽い病気は消失し、9ヶ月続ければ結核やハンセン氏病も治る。」と述べられており、ヴェーダ経典では「尿は最も良く効く最高の薬。それは不老不死をもたらす神の飲み物である。」と語られています。

 

  旧約聖書の箴言第五章十五節には、性病をわずらった男性に対するアドバイスと読み取れる「あなた自身の井戸から水を汲み、あなた自身の泉から湧く水を飲め。」という言葉が記録されており、ヨハネの黙示録第二十二章十七節には「渇いている者は来るが良い。命の水が欲しい者は値なしに飲むが良い…。」という一言があり、この「命の水」は、ヘブライ語の聖書には「尿」として記載されています。

 

  1613年に韓国で編纂された漢方治療の古典「東医宝鑑」湯液編にも、湯液治療の中に「尿処方」の項目があり、「人尿の性質は冷たく味は塩辛い。毒が無く、疲労の渇きと咳を止める。心肺を潤滑にし、血悶と熱狂および撲損と瘀血で乱れる症状を治療し、目を明るくし、音を鋭敏にし、肌膚を潤沢にする。」と記されています。また、尿処方の著しい効能を説明する実例として、「80歳の老父が40代に見えたので尋ねたところ、若い時悪い病気にかかり尿を飲み始め40余年、今も健康で他の病気はないと語った。」と記載されています。

  

19世紀初頭にイギリスで出版された、「注目に値するもの一千点」という書籍には、飲尿療法について「身体の内外の全ての病気に対する普遍的ですぐれた療法。9日間毎朝あなたの尿を飲みなさい。壊血病が治り、身体は軽快になり、元気になります。」「尿を温めて、それであなたの耳を洗いなさい。そうすればそれは、聴覚障害や耳鳴りその他ほとんどの耳の病気に効きます。」「目を自分自身の尿で洗いなさい。そうすればそれはただれ眼を直し、視力をはっきりさせ、強めます。」「手をそれで洗い、すり込みなさい。そうすればそれは、しびれや、あかぎれ、赤むけを取り去り、手指の関節をしなやかにします。」「生傷を尿で洗いなさい。これほどの目覚ましい効果を示す薬はありません。」「かゆいところはどこでも尿で洗いなさい。そうすればそれは、かゆみを取り去ります。」「肛門を尿で洗いなさい。そうすればそれは、痔やほかのただれにも効きます。」と記載されています。 

 

  日本では、1912年に産まれ、2002年に91歳で死去した中尾良一医学博士による啓蒙活動が有名で、一時は、健康雑誌「壮快」に数年間にわたって博士の尿療法の記事が掲載され、当時日本全国で200万人ほどの人が尿療法を試みたと言われています。この流れを汲んで、日本では2017年現在まで、尿療法により難病を克服した人々などによる「尿療法全国大会」も継続して開催されています。

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